

岡田 康介
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運搬作用とは
運搬作用とは、体の中や細胞の中で物質を移動させる役割や仕組みのことを指します。私たちが呼吸で吸った酸素が血液で全身へ運ばれるように、食べ物の栄養素が細胞まで届けられ、不要な物質が外へ出ていくような仕組みもすべて「運搬作用」の一部です。
生体内の主な運搬の仕組み
生物には主に以下のような運搬の仕組みがあります。拡散、浸透、促進拡散、能動輸送、そして血液循環系による搬送です。
拡散は、分子が高い濃度から低い濃度へ自然に広がる動きです。エネルギーは必要ありません。例としては酸素が肺から血液へ、二酸化炭素が血液から肺へ移動する現象があります。
浸透は水の移動に特化した拡散の一種です。半透膜を挟んだ水の移動が起こり、細胞内外の水分量を調整します。
促進拡散は、膜を横断するために運搬タンパク質が手助けをする過程です。エネルギーは必要ありませんが、特定の物質だけが通れます。例としてブドウ糖の取り込みがあります。
能動輸送は、細胞がATPを使って濃度勾配に逆らって物質を移動させる仕組みです。ナトリウム-カリウムポンプなどが代表例です。
動物と植物の運搬の違い
動物の体内では血液が荷物を運びます。一方、植物では木部と師部が水分や栄養分を運搬します。木部は水の通り道、師部は光合成で作られた糖を運ぶ通路です。
日常と健康に役立つポイント
私たちが健康でいるためには、適切な水分補給、栄養、運動が関係します。体は運搬作用が滞ると疲れやすくなったり、病気を引き起こすことがあります。
身近な例として、呼吸と循環、腎臓の老廃物の排出、脳へのブドウ糖の供給、筋肉運動中の酸素供給など、日々の生活と深く結びついています。
さらに、薬の体内移動も運搬作用の一部です。薬が体内で適切な場所に届くよう、消化管から血液、組織へと移動する過程が関わります。
まとめ
要するに運搬作用は、私たちの体と世界の生物が生きていくための基本的な仕組みです。見た目には難しくても、日常の身近な現象として観察できます。
運搬作用の同意語
- 輸送作用
- 物質をある場所から別の場所へ移動させる働き・現象。生体内のイオン・栄養素の移動や機械・化学系の搬送を表す、最も一般的な同意語。
- 搬送作用
- 物質を移動させる働き。輸送と同義で使われることが多いが、文脈によりはっきりと搬送の手段・過程を示すニュアンスになることもある。
- 輸送機能
- 物質を移動させる能力・機能。生体内・機械系における輸送を担う性質を指す言い換え。
- 搬送機能
- 物質の搬送を担う機能。運搬を意味する語の代替として使われる表現。
- 輸送機構
- 物質を移動させる仕組み・過程。運搬を実現するメカニズムを指す表現。
- 搬送機構
- 物質を搬送する仕組み・過程。運搬を担う機構を示す言い換え。
運搬作用の対義語・反対語
- 静止
- 運搬を伴う動きが一切なく、物質が場所を移動しない状態。
- 停止
- 運搬が中断され、物質の移動が行われない・あるいは大幅に遅れる状態。
- 滞留
- 物質がある場所に留まり、先へと移動しない状態。滞在が長く続くことを指すことが多い。
- 局在
- 物質が特定の場所に局在し、全体的な移動が抑制または止まっている状態。
- 固着
- 物質が組織や表面に付着して動きが制限される状態。
- 固定
- 位置が動かせず固定され、運搬機能が働かない状態。
- 排出作用
- 体内の物質を外へ出す方向の運搬、運搬の逆方向の機能。
- 排除
- 不要な物質を体外へ出す機能・状態、運搬の反対の方向性を示す概念。
運搬作用の共起語
- 膜輸送
- 細胞膜を介して物質を内外へ移動させる過程の総称。受動輸送と能動輸送を含み、拡散・浸透・トランスポーター介在輸送などを含む。
- 受動輸送
- ATPを使わず、濃度勾配に従って分子を移動させる運搬機構。例には拡散や浸透がある。
- 能動輸送
- ATPなどのエネルギーを利用して、濃度勾配に逆らって物質を移動させる機構。
- 拡散
- 分子が濃度差に沿って自発的に広がる最も基本的な運搬現象。
- 浸透
- 水が半透膜を通って移動する現象。水の運搬として重要。
- トランスポーター
- 膜上のタンパク質で、特定の物質を結合して輸送する機構。
- 担体
- トランスポーターと同義の輸送タンパク質の別称。
- チャネル
- イオンなどが通過する開閉する膜の通路タンパク質。
- イオンポンプ
- イオンを膜を越えて移動させる能動輸送のポンプ。
- ATP
- エネルギー分子。能動輸送のエネルギー源として使われる。
- 膜電位
- 膜内外の電位差。イオン輸送の駆動力となる。
- 細胞膜
- 細胞を囲む薄い膜。選択透過性を持ち、輸送を制御する。
- 濃度勾配
- 濃度の差。輸送の主な駆動力となる。
- 濃度差
- 内外の濃度の差。輸送の基本駆動力のひとつ。
運搬作用の関連用語
- 運搬作用
- 生物体内で物質を取り込み・排出・組織間へ輸送する一連の作用の総称。細胞膜を介した輸送を含む基本概念です。
- 拡散
- 分子が濃度勾配に従って自然に広がる現象で、エネルギーを使わずに起こる基本的な輸送機構。
- 単純拡散
- 脂質二重層を自由に越えられる小さな非極性分子や水などが、濃度差に沿って膜を通る拡散。
- 促進拡散
- 膜タンパク質(チャネルやキャリア)を介して、濃度勾配に沿って分子を移動させる拡散。エネルギーは不要。
- 受動輸送
- 濃度勾配に従って物質を移動させる輸送。ATPなどのエネルギーは使いません。
- 能動輸送
- 濃度勾配に逆らって物質を移動させるためにエネルギーを使う輸送機構。
- ATP依存輸送
- ATPの分解エネルギーを利用して物質をポンプする輸送。
- Na+/K+-ATPase(ナトリウム-カリウムポンプ)
- 細胞膜にある代表的なATP依存ポンプで、Na+とK+の濃度を維持するのに重要な輸送体。
- イオンポンプ
- 特定のイオンを膜を越えて一方向に輸送する膜タンパク質の総称。
- イオンチャネル
- 特定のイオンだけを通す孔状の膜タンパク質。イオンの拡散を制御します。
- チャネル輸送
- チャネルタンパク質が提供する通路を使ってイオンなどを膜を越えて通す輸送。
- キャリア輸送
- 基質を結合して膜を横断させるトランスポーター。受動輸送・能動輸送のいずれかで機能します。
- 共輸送(共輸送/共役輸送)
- 同じ方向へ2つ以上の分子を同時に輸送する機構。例としてNa+とグルコースの共輸送が挙げられます。
- 対向輸送(逆輸送/アンチポーター)
- 異なる物質を反対方向へ同時輸送する機構。
- 輸送体/トランスポーター
- 膜上で物質を輸送するタンパク質の総称。
- アクアポリン
- 水分子を通す特化した膜タンパク質。水の透過を速める役割を担います。
- オスモシス(浸透)
- 水が半透膜を介して高濃度側から低濃度側へ移動する現象。細胞の水分バランスを左右します。
- 浸透圧
- 水の移動を生じさせる圧力差のこと。生体内での水分調節に関与。
- 膜透過性
- 膜を分子が通過できる性質。透過性が高いほど輸送が起こりやすい。
- 選択的透過性
- 特定の分子だけを透過させる膜の性質。
- 基質特異性
- 輸送体が特定の基質を選んで運ぶ性質。
- 受容体介在内吞(レセプター媒介内吞)
- 受容体と結合した物質を膜に取り込み、細胞内へ取り込む過程。
- エンドサイトーシス
- 細胞が外部から物質を取り込む一連の過程。ピノサイトーシス・ファゴサイトーシスを含みます。
- ピノサイトーシス
- 液体や小さな分子を取り込む内吞の一形式。
- ファゴサイトーシ스
- 大型粒子を取り込む内吞の一形式で、いわゆる“食作用”に相当します。
- エキソサイトーシス
- 細胞内の物質を細胞外へ放出する過程。分泌や排出に関与します。